京都自転車日記

夏目漱石に「自転車日記」という小文があります。畏れ多いと自覚しつつブログのタイトルに拝借しました。京都市街は東西にも南北にも約10Km、自転車サイズの街です。美しい山々が街を囲み、その向こうには趣きのある山里や山寺が点在し、サイクリングコースに事欠くことはありません。 恵まれた環境が独特の自転車文化を育み、個性的な自転車屋さんや自転車愛好家が集まるお店がたくさんあります。 そんな京都の自転車事情を全国の自転車愛好家に紹介できたら良いな、と思っています。

カスク、ピスト(自転車とフランス語)

 

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革製の自転車用ヘルメット「カスク」を購入してからヘルメットを使わなくなりました。サイクリングキャップ+カスクは実に快適。次のシクロクロスシーズンが始まるまでヘルメットは被らないと思います。最新のヘルメットに比べると保護性能は劣るのでしょうが、80年代まではプロのロードレーサーもこれを被っていたと思えば、そんなに飛ばすわけではない僕にはこれで十分。

ところで「カスク」はフランス語で「ヘルメット」のこと。自転車用ヘルメットは「Casque de vélo」。革製のヘルメットとともにロードレース本場の呼び名をそのまま輸入したのだと思います。その後、革製でなくなったヘルメットは「カスク」と呼ばれることはありませんでした。面白いですね。

同じような言葉に「ピスト」があります。「ピスト」はフランス語でトラック、走路のこと。フランス語でトラック競技用の自転車を意味する「vélo de piste」あるいはイタリア語の「bicicletta da pista」に由来する言葉。でもいま日本で「ピスト」と言う場合と同じ文脈でトラック競技用自転車のことを言うとき、フランス語のウェブサイトでさえ英語(fixie)由来の「fixe」と書かれていることが多い。面白いですね。

日本で使われ続けている「カスク」と「ピスト」という言葉。フランスの自転車文化に敬意を表して使い続けるのも悪くない。実物の「カスク」のほうも今はヘルメットに押されて見かけることが少なくなりましたが、このまま過去のものとしてしまうにはもったいない良さもあると思います。